農村を一つの大きなホテルにたとえる、「里山まるごとホテル」構想の宿の一つである。コンセプトである「たべる、くつろぐ、ほっとする」を、宿においてどう表現するかについて施主である山本亮氏と議論を重ねた。山本氏からは、一棟貸し型の宿をつくる中で、広い家に大人数のグループで合宿のように過ごせる宿ではなく、少人数で里山に流れる時間を感じられる宿にしたいという要望があった。しかし、奥能登地域の古民家の特徴はその面積の大きさ、部屋数の多さにあり、少人数で宿泊すると広すぎて不安を感じてしまうのではないかという懸念があった。そのため、減築をおこない客室面積を減らすとともに、部屋の用途によって天井高や内装を調整することで、広い均一な空間を分節し、古民家のもつ広すぎる印象を与えないように配慮した。
また、「元からそこにあったように」直してほしい(計画してほしい)という要望から、本来畳の下に隠れてしまう地板を洋寝室とダイニングキッチンのフローリングとして活用した。地板には漆が塗られており、化粧材として十分耐えうる仕上がりとなった。
(Photo: 越田 純市)